CoaXPress経由のトリガー
CXPトリガーの特性と、要求の厳しいマシンビジョンアプリケーションにおけるその利点。
シンプルで高性能: CoaXPressホストツーデバイストリガーによる正確なカメラトリガー
CoaXPressは、高解像度画像の高速転送を実現するために高帯域幅を必要とする用途で一般的に使用されているマシンビジョンインターフェイステクノロジーです。ただし、CoaXPressの特長は帯域幅だけではありません。この規格には、GigE VisionやUSB3 Visionなどの他のマシンビジョン規格を超える、正確なトリガーを送るための高度な組み込み機能も備わっています。
この記事では、CXPによるトリガーの特徴と要求の厳しいマシンビジョン用途におけるメリットについて説明します。
CoaXPress規格の組み込み機能
CoaXPressホストツーデバイストリガーは、CoaXPress規格の一部です。このCoaXPress I/Oチャンネルの機能を使うと、ホスト(フレームグラバー)がCoaXPressリンクを通じてデバイス(カメラ)をトリガーすることができます。
トリガー信号は以下の様々なソースで開始されます。
- 画像処理アプリケーションのソフトウェアコマンド
- カメラ自体のトリガー出力(トリガーシーケンスを開始するためなど)
- 照明コントローラー
- フレームグラバーの汎用I/O(GPIO)に接続されたその他のセンサーまたはアクチュエーター
そのため、CoaXPressによるトリガーは、撮像の正確なタイミングや、照明、他のカメラ、またはセンサーなどの他のシステムコンポーネントとカメラの同期が不可欠な産業用途に最適とされています。
単一ケーブル接続による単純なシステムアーキテクチャ
CoaXPressトリガーは、フレームレートコントロールデータ、高速画像データストリーム、およびカメラの電源とともに、単一のケーブルレーンで伝送されます。この単一ケーブルのソリューションによってセットアップに伴う複雑な作業が軽減されるため、設置や保守をより簡単に実施することができます。これは特に、限られたスペースや複数のカメラの設置が必要となる環境において役立ちます。また、追加のI/Oケーブルも不要となるため、全体的なシステムコストの削減が可能です。
低レイテンシーと最小限のジッター
時間重視の用途においては、インターフェイスの規格が何であれ、I/Oポートではなくインターフェイスでトリガーすることには必ず懸念が生じるものですが、多くのシステムエンジニアは、CoaXPressのトリガーが非常に低いレイテンシーとジッターを備えていることを認識していません。
レイテンシー(または遅延)は、信号がセンサーと信号の受信機の間で物理的に伝送されるために必要となる時間です。物理的な値としては理論上は定数ですが、実際には、変動が発生します。この変動の振幅がジッターです。マシンビジョンでは、迅速な検査タスクの実現において低レイテンシーが重要とされますが、システムのパフォーマンスの予測性に影響を与えるジッターはさらに重要となります。
CoaXPressトリガー信号のレイテンシーは、0.5マイクロ秒(µs)を下回り非常に低いため、制御入力に対する反応が非常に高く、迅速かつ正確な応答が保証されます。アクチュエーター駆動の用途や、カメラの前を高速に移動する対象物をセンサーで検出する場合など、イベント駆動型のトリガーに有効です。 比較すると、アクチュエーターから専用のI/Oケーブルを通じて直接入力されるトリガー信号の典型的なレイテンシーは約5 µs(オプトカプラーの場合は最大25 µs)であるため、CXPケーブル経由のトリガーで発生する追加遅延はわずかと言えます。
この非常に低いレイテンシーに加えて、CoaXPressホストツーデバイストリガーには、次のキャラクタ境界までの遅延に対応する0~480 nsのジッターがあります。このジッター値は、露光の開始が常に最後の立ち上がりエッジトリガー信号に一致するようにカメラが入力トリガー信号に可変遅延を自動的に追加する、CoaXPressのジッター補正機能によって抑えられています。これにより、残留ジッターがわずか2 nsまで抑制され、ジッターの実質的な排除が実現しています。


そのため、CoaXPressによるトリガーは、撮像の正確なタイミングや、照明、他のカメラ、またはセンサーなどの他のシステムコンポーネントとカメラの同期が不可欠な産業用途に最適とされています。
確認応答ループによるトリガー信号転送の信頼性
CoaXPress規格では、送信されるすべてのトリガーメッセージに対し、受信機からの確認応答を必要としています。これにより、カメラとフレームグラバー間の通信の信頼性と堅牢性が保証されています。確認応答は、エラーの防止とトリガーメッセージの正確な受信と処理を確実に実現する仕組みであるため、医療画像処理や品質管理といった信頼性が極めて重要な用途において重要です。
事前に設定されたタイムアウトが発生する前に確認応答が受信された場合、トランザクションは正常終了となります。
注意 : Euresys CoaXPressフレームグラバーには、システム開発者が用途のニーズに合わせてタイムアウトを細かく調整できるように、「CxpTriggerAckTimeout」という追加のGenApi機能が備わっています。
タイムアウトの期間内に確認応答が受信されなかった場合、送信機はリトライを実行できます。このリトライでは、トリガーパケットを再送信し、確認応答の新しい待ち期間が開始されます。
注意 : Euresys CoaXPressフレームグラバーでは、Euresysの「CxpTriggerMaxResendCount」GenApi機能を使ってリトライの回数も構成できます。
定義された最大リトライ回数に達しても確認応答が受信されなかった場合、トランザクションは異常終了となります。

低レイテンシー、低ジッター、および確認応答ループを備えたCoaXPressトリガーは決定論性が非常に高いため、一貫して予測どおりに動作します。これは、正確なタイミングと同期を必要とする産業・科学用途に不可欠です。
カメラ露光時間の制御
CoaXPressのトリガー機能は、画像の撮影を開始するだけではありません。ユーザーは規格のコマンドを使用することで、カメラの露光時間も制御することができます。
これは、デフォルトのトリガーメッセージ形式(パルス)で実現できます。送信機は、トリガーごとに信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジにおける2つのデバイストランザクションを生成しますが、フレームグラバーはこれらの信号間のギャップを使用して、カメラサイクルを制御することができます。このため、開発者は対象物の速度や照明の条件などを柔軟に調整して、画像の取り込みをさらに最適化することができます。
最大78 MHzのトリガーレート
CoaXPress規格では、フレームレートコントロールと、フレームグラバーからカメラへのトリガーに使用される通信経路を「Upconnection」(上り接続)と読んでいます。CXP規格のバージョン2.0では、CXP-10とCXP-12の速度において、この上り接続が20.83 Mbpsから41.67 Mbpsに2倍なりました。これにより、フレームレートコントロールとトリガーのレートが高速化され、専用の高速アップリンクケーブルを必要とせずに、500 kHzを超えるトリガーレートが可能となっています。
CoaXPressでは高トリガーレートを実現できます。CXP-6までは、インターフェイス経由で最大297.6 kHzのトリガーレートが可能です。CXP-10とCXP-12リンク速度では、最大595.2 kHzのレートがサポートされています。このため、CoaXPressによるトリガーは、インライン検査やリアルタイム監視などの高速撮像用途に最適です。
この周波数が十分でない場合、CoaXPressの高速上り接続オプション機能を使うことで、さらに高いトリガーレートを実現できます。
高速上り接続では、上り接続に専用のアップリンクケーブルを割り当てることで追加帯域幅を提供し、CXP-12リンク速度で最大78 MHzのトリガーレートが可能になります。
双方向トリガー
CoaXPressでは、カメラからフレームグラバーへのトリガーもサポートされています。たとえば、カメラがスキャンの開始と終了を制御できるため、様々な用途において柔軟性を得ることができます。双方向トリガーでは、カメラがフレームグラバーにトリガー信号を送信できるため、さらに柔軟でダイナミックな操作が可能となります。これは、カメラがトリガーのタイミングを制御する必要のある、自動検査システムやリアルタイム関しなどの用途で重要な機能です。
まとめ
CoaXPressはそのトリガー機能だけで知られているわけではありませんが、GigE VisionやUSB3 Visionなどの他のマシンビジョンインターフェイスに比べると、低レイテンシー、低ジッター、信頼性に非常に優れたトリガー信号転送、高トリガーレート、および露光時間制御や双方向トリガーなどの追加機能を備えた隠れたトリガーチャンピョンのようです。システムエンジニアはこれらの機能を使用することで、よりシンプルなハードウェアセットアップで低コストかつ高性能の撮像システムを設計することができます。